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この街で夢をかなえる

~エンタメで地方を元気にするリンゴミュージックの挑戦~ 堀米薫著
JA全中

 青森県出身の女性タレント、「王林」といえば、今ではテレビでその姿を見ない日はないと言っても過言ではない。抜群のスタイル、愛くるしいルックス、そしてどこか親しみを感じさせる「津軽弁」の口調で人気を博している。
 彼女は2022年3月まで、青森県のご当地アイドル「りんご娘」のメンバーとして活躍していた。

   青森はもうだめだ
   ここじゃ何もできない

 そんな声が方々から聞こえてくる青森県を活性化させたい、「青森県のためになること」をしたい、と立ち上がる一人の男がいた。地元の自動車販売会社の社長樋川といかわ新一しんいち氏は、「芸能経験ゼロ、資金ゼロ、スタッフゼロ」の状態から、アイドル養成を目指し芸能スクールを立ち上げた。

 アイドルのコンセプトは農業活性化。青森の産業を支える農業を活性化させ、地域経済を回していくことを目指し、青森を代表する農産物の名を冠し「りんご娘」と名付けた。彼女らがデビューした2000年は、りんご農家の高齢化、担い手不足が課題となっていた。多くの人に関心を持ってもらい、リンゴの消費・生産の拡大と担い手の確保を目指す、「りんご娘」はまさに「農業活性化アイドル」のパイオニアである。

 「りんご娘」の特徴の一つにメンバーの芸名がある。「ジョナゴールド」「王林」「彩香」などすべてリンゴの品種名を名乗っている。青森県を代表する品種を名乗ることで、青森の農業を応援し、消費拡大につなげるといった思いもあった。さらに、「りんご娘」は自らのファンを「ファーマー」すなわち、「農家」と呼ぶなど徹底して農業を応援している点も特筆に値する。

 ひたむきに青森を思い活動する彼女らは、次第に地域から受け入れられ、他の地域からファンや移住者を呼び寄せ、地域に欠かせない存在となっていく。彼女らの活動は、青森の、東北の、さらには日本全国の人々に勇気を与えているのである。著者の堀米氏は、生粋の東北人であり、家業は農業と林業を営み、JA全中主催「ごはん・お米とわたし」作文・図画コンクールでは作文部門の審査員を務めるなど「リアルファーマー」の一面を持つ。この本には、そんな著者から読者へ夢を後押しするエールも込められている。

 常識にとらわれない地方活性化の在り方の一つの答えがこの本には記されている。地域の活性化を考えるうえで必読の一書。

(評 JA全中広報部)

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