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地域の元気を生み出すJA

〜2025年 2度目の国際協同組合年に向けて〜

楽しみながら学ぶ茶育「 TEA ティー HEROヒーロー選手権」

~JAハイナン青壮年部とJAハイナンが取り組む食農教育~
小林聖平 一般社団法人日本協同組合連携機構(JCA)基礎研究部 主席研究員

 昨年の11月、国連総会は2012年に続き、2025年を2度目の国際協同組合年にすることを宣言しました。
 JAグループは、持続可能な地域社会をつくる日本の協同組合の取り組みについて、認知を高めていく絶好の機会として捉えてまいります。
 今後、「協同組合」についての関心が高まることが想定される中、全国各地で「協同組合の力」を発揮しているJAの取り組みを紹介します。

<静岡県:JAハイナン>
 JAハイナンは静岡県榛原はいばら郡南部に位置し、2市1町(御前崎市のうち旧御前崎町・牧之原市・吉田町)が管内地域となる。東は大井川、西にはマリンスポーツの聖地として、また全国屈指のウミガメの産卵地として知られる御前崎、北には全国有数の茶産地「牧之原大茶園」が広がり、南は広大な砂浜と遠浅の海岸線で駿河湾に面している。
 温暖な気候と肥沃ひよくな土地に恵まれ茶産出額(茶産出額=生葉産出額+荒茶産出額)は県内でも大規模な生産地となっている。また、南アルプスから流れ出る大井川の伏流水を利用した水稲をはじめ、レタス、メロン、ミカン、イチゴ、トマト、花卉かきなどの施設園芸も盛んである。

牧之原大茶園の風景

1. はじめに

 全国有数の茶産地である静岡県牧之原市内の小学5年生は、地域の基幹作物であるお茶の魅力を楽しみながら学ぶ「茶育(食農教育)」(以下、「茶育」)として「TEAティー HEROヒーロー選手権」(以下、「選手権」)を全員が体験する。この茶育を担っているのがJAハイナン青壮年部(以下、「青壮年部」)とJAハイナンである。
 楽しみながら学ぶ選手権とはどのような取り組みなのか。また、青壮年部とJAの役割やその効果などについて紹介する。

2.「TEAティー HEROヒーロー 選手権」とは

(1)「お茶の魅力を伝えお茶ファンの育成」を目指す選手権

 選手権は茶どころ「牧之原市」の小学生に地域の基幹産業である茶業への深い知識と、お茶のおいしさや文化を伝え、お茶ファンとして育成することを目指し開催される。内容はリーフ茶(茶葉かられる緑茶)の歴史やおいしいお茶の淹れ方など、お茶についてのさまざまな知識を楽しく学び、さらにゲーム性に富む「闘茶(注1)」を通して、お茶の魅力を五感に残る楽しい体験として伝える取り組みとなっている。

(注1)闘茶とは、中世に流行したお茶の味を飲み分けて勝敗を競う遊び。ゲーム性が強く賭け事に利用されたこともあり室町幕府が禁止令を出したほど人気を博した。現在は、茶生産者などの茶業関係者によって、その鑑定技術を競う正式な競技(全国茶審査技術競技大会)として受け継がれ、年に1度全国大会も開催されている。

(2)「牧之原市一のお茶博士」を決定

 青壮年部はJAの支援を受け、10~12月にかけて市内の全小学校(現在9校)の5年生を対象にクラスごとに選手権を開催している。
 選手権は5種類の茶葉を答える「闘茶会」とお茶の知識を問う10問前後からなるお茶のクイズ「お茶博士になろう!」の構成である。クラスごとに開催される選手権は予選会を兼ね、勝ち抜いた各クラスの成績上位5名が代表者として1月に開催される決勝戦「TEA HERO選手権チャンピオンシップ」に出場する。「牧之原市一のお茶博士」を目指し、市内全校から約80名(年度により異なる)が一堂に集い、個人の部とクラス対抗の団体の部で優勝者を決定している。

(左)クラスで実施する選手権の様子/(右)「TEA HERO選手権チャンピオンシップ」の様子
(3)「闘茶会」とお茶のクイズ「お茶博士になろう!」

 「闘茶会」は第1審査と第2審査からなり、それぞれの合計点数で順位を決定する。
 第1審査は5種類の茶葉を答える「外観審査」である。最初にお盆にのった5種類の茶葉を拝見時間、各30秒間で色と形と香りなどを覚え、茶葉の特徴をメモに取る予備審査の作業を行う。その後、再び、お盆にのった各茶葉が回覧され拝見30秒、解答30秒という短い時間の中、茶葉を判定する。
 第2審査は5種類のお茶の色と香りと味などを確かめ茶葉を答える「内質審査」を2回行う。茶量10g、浸出時間90秒、湯量300mLで煎出されたお茶を口に含み茶葉の種類を判定するのであるが、こちらも服用30秒、解答30秒である。
 筆者もYouTubeでチャンピオンシップの様子を視聴したが、全国茶審査技術競技大会(闘茶会)にならったもので、お茶を使った遊び、ゲームとはいえ、五感を研ぎ澄ませた子どもたちの真剣勝負はお茶のプロが参加する全国茶審査技術競技大会と遜色そんしょくないものであった。
 なお、使用される審査茶は牧之原市のお茶を知ることを目的に「普通煎茶」、「深蒸し煎茶(牧之原台地の特徴を生かした主流のお茶)」、静岡牧之原茶「望(JAハイナンのブランド茶)」、「つゆひかり(栽培が増えているお茶の品種の一つ)」、「香り緑茶(「低温萎凋ていおんいちょう」工程を加えた新しいお茶)」の5種類の茶葉が出題される。

静岡牧之原茶「望」
遮光ネットで茶園を覆い直射日光を避けて栽培し、鮮やかな緑色で、うま味があり渋味を抑えたお茶。
厳しい審査に合格したものだけが「望」となる。

 次に、お茶のクイズ「お茶博士になろう!」は下図のとおり、お茶の歴史や健康効果などお茶にかかる幅広い知識を学ばないと正解できない内容となっている。

お茶のクイズ「お茶博士になろう!」より抜粋
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