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ニッポンはおいしい!

~食と農から未来は変わる。地域に豊かさをもたらす女性たちの活躍~ 金丸弘美著
JA全中

 日本各地の農山漁村の現場において、女性の活躍により新たなイノベーションが生まれている。様々な思いを抱いて農業の現場に踏み出し、自由な発想で新たな取り組みにチャレンジし、地域の活性化に貢献している事例がある。

 本書では、「消費者との接点」「食農体験と観光」「海外からの視点」「持続社会と地域経済の連関」「地域の食と環境の豊かさ」「都市農業での新たな挑戦」という6つの切り口から、日本各地で地域に新たな風を吹き込む12名の女性を紹介している。いずれも、長年全国の農山漁村を取材してきた筆者厳選の取り組みである。

 例えば、千葉県いすみ市でジェラート店を営む馬上まがみ温香はるかさんは、両親が経営する牧場内でチーズ店、ジェラート店を営む。「牛が好きで好きでたまらない」という馬上さんは、牛を連れて学校へ赴き、子どもたちに酪農を知ってもらう「モーモースクール」に取り組むなど、食農教育に積極的に取り組む。ジェラートは、地元千葉県で取れたピーナッツや蜂蜜を積極的に使用し、「地元ならではのジェラート」とだと口コミが広がっていく。地域住民だけではなく、ジェラートを求めて近隣からも多くの人が訪れるという。6次産業やツーリズムと連携した地域創りなど、今の時代の先頭を走る馬上さんの取り組みに着目している。

 また、名古屋市中心部の都市型公園オアシス21で毎週土曜日に無農薬・無化学肥料の農産物を販売する「オーガニックファーマーズ朝市村」や、山口県周防大島町で地元の食材をふんだんに使ったジャムを生産・販売する「瀬戸内ジャムズガーデン」は日本農業賞¹で大賞を受賞するなど、彼女らの活躍は注目を集めつつある。

 いままで、多くの女性が農業に従事してきたが、組織の代表や経営者は男性が多く、女性の声が表に出ることは少なかった。本書で取り上げられた12名の女性たちは、そのような「ガラスの天井」を打ち砕き、豊かな発想により地域に新たな風を起こしている。「持続社会を創るのは女性の力」であり、今後もますます女性の活力やアイデアが重要になってくるのではないか。本書は、持続可能な地域づくりを考えるうえで、柔軟な発想の視座を与えてくれる必読の書である。

(評 JA全中広報部)

1 日本農業賞は、NHKとJA全中、JA都道府県中央会が主催する表彰事業(https://agri.ja-group.jp/promote/prize/)。「オーガニックファーマーズ朝市村」は第45回(2015年度)、「瀬戸内ジャムズガーデン」は第50回(2020年度)日本農業賞「食の架け橋」部門の大賞を受賞。

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