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本気で農業始めました

第4回 道の駅で地域農業をPR

農家仲間と売り場に立つ喜び
フリーライター 久米千曲

 新潟県田上町にある道の駅たがみで8月上旬、農家ら作り手に着目したイベント「たがみこれから市」が開かれました。参加した農家のうち若手4人はいずれもJAえちご中越なんかん青年部に所属、山川仙六農園の後継者、山川敏幸さん(34)もその1人です。少量多品目栽培の農家ならではの売り場を構え、消費者や仲間との交流を深めました。

 
開店に向けて売り場で準備する山川さん(右)。勤務先の高校の生徒も参加し体験した

作り手の物語を発信 農産物通じ初対面も実現

 対面販売や展示により来場者に作り手の物語を知ってもらい、「これから」の地域活性化につなげようと、田上町商工会や道の駅などを中心にした実行委員会が企画しました。道の駅を核に昨秋、初めて開催。今年度は3回開く予定です。
 昨年に引き続き参加した山川さんは今回、山川仙六農園で職業体験する勤務先の高校の生徒と共に出店しました。黄色いコンテナをひっくり返した台に旬の桃「よしひめ」をはじめ、ジャガイモにタマネギ、キュウリ、ミニカボチャ、タケノコの缶詰、米、奈良漬などを並べ、POP(購買時点広告)を掲示して売り込みました。
 山川さんは普段、道の駅にも農産物や加工品を出荷しています。「砂漠に種をまくような暑さ」(山川さん)の中、道の駅で何度も買っている米や野菜の作り手に会いたいと訪ねてきた女性客もいました。農産物を通じた対面に山川さんは「評価を直接聞けるのは本当にうれしい」と声を弾ませます。

旬の桃の特徴を買い物客に説明する山川さん

仲間の農家とも連携 面的に売り場でアピール

 並びには同世代の農家2人が売り場を構えました。収穫終盤となった桃「あかつき」を中心に用意した農家の9代目や、キュウリとナスの2品目に絞り込んだ元JA職員で就農4年目の若手です。少し離れた場所には、米を主力とする先輩農家がジャガイモを中心にした野菜の品ぞろえを充実させた売り場を展開しました。
 経営体としての参加とはいえ青年部の仲間です。混雑時には接客を手伝ったり、案内をしたりして連携しました。仲間の農家からは「売り方や見せ方に個性がある」「互いに刺激になる」との声があった他、面的な売り場の展開に「若い世代も地域農業に関わっている姿をアピールできた」と手応えを感じていました。

料理で再現された畑 孤独でない農業に喜びも

 会場にはこの日限りのレストランも登場しました。素材にこだわった料理を町内で提供するカフェのオーナーシェフが、参加農家の野菜などを使った特別メニューを用意。「田上産野菜のバーニャカウダ」の盛り付けはオーナーシェフが山川さんの畑を見学した際にヒントを得て再現。味覚だけでなく視覚にも訴え、来場者の関心は一層高まりました。
 農産物と農家を併せて知ってもらう企画に山川さんは「仲間と同じ売り場に立つ喜びを感じました」と強調し、多数の出会いがあったイベントをこう振り返りました。
「仲間あっての自分。農業は孤独ではないことにあらためて気付きました」

レストランで提供された「田上産野菜のバーニャカウダ」。稲わらを使った盛り付けは見学した山川さんの畑から着想を得たという

参加した農家ら仲間と笑顔を見せる山川さん(前列左)
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