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若者がみつめる農・食

農・食の未来を拓く高校生・大学生の研究

果実の搾りかすを活用して飼料価格の急騰に立ち向かう

~山形県立置賜おきたま農業高校 置農SDBoys&Girlsの挑戦~
JA全中

「全国高校生 農業アクション大賞」について
 
 JA全中は毎日新聞社と連携し、農業高校(農業系学科があるなどの関連高校を含む)の生徒たちがグループとなって取り組む「農」や「食」に関するプロジェクトや課題研究を「全国高校生 農業アクション大賞」として支援・顕彰しています。
 農家の人たちなど地域と連携して実践する3か年の計画を募集し、毎年度15グループを認定。優れた実績を残したグループには、3年目に「大賞」や「準大賞」を贈ります。

奨励賞 山形県立置賜農業高校 置農SDBoys&Girls

 東日本大震災の発生以降休止していた「置農MOTTAINAIプロジェクト」の再開を求める地域の声が急増しました。このプロジェクトは、リサイクル飼料を畜産などに活用するものです。声があった背景には、配合飼料価格の急騰があります。米沢牛の産地は、危機を迎えていました。
「米沢牛を守れ!」を合言葉に、プロジェクト2を立ち上げました。
 数種類の飼料を混合する「TMR(Total Mixed Ration)」に着目しました。残渣ざんさをロールなどで密封して発酵させれば、1年以上保存できます。地域アンケートで、TMRを導入したいと答えた和牛農家は65%ありました。
 農家の労働負担を減らす狙いから「TMR」の給与が推奨されていますが、現状では岩手や栃木からの輸送に頼っているため、1㎏当たり70円前後と高コストなのがネックでした。「ならば、果樹王国やまがたの加工場から出る残渣を使おう」と考え、地元の食品会社やワイナリーの協力でリンゴや茶、ワイン残渣を確保しました。リンゴの搾りかすを使ったTMRの牛の食いつきは9割以上で、単価は県外からTMRを購入するよりも20円以上安い。北海道の十勝農協連農産化学研究所の飼料成分の検査で、乳牛、繁殖と育成の和牛に十分給与できるとの結果が出ました。
 入手可能な残渣を使ったTMR生産量は、同校のある川西町で飼育されている全ての和牛より900頭も多い約2,200頭分をまかなえる量になります。同校、県酪農協、ワイナリーや食品会社、県・家畜診療所をネットワーク化した「おきのうSDGsプロジェクト」を立ち上げました。生徒らの研究成果が県を動かし、TMR製造機の導入を予算化しました。

米沢牛と並ぶ生徒たち

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